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破産債権とは?

自己破産を検討して色々とネットで調べられたり、あるいは法律事務所に相談に行かれた際、「破産債権」や「破産債権者」といったワードを耳にするかと思います。ここでは、よく聞くけれども、正確には理解していない「破産債権」についてご説明させていただきます。

 

まず、破産債権とは、破産者に対し、破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権(財団債権についてはまたの機会にご説明します。)に該当しないものをいいます(破産法2条5項)。

そして、この破産債権は、破産手続外での権利行使が禁止され(100条1項)、調査・確定手続を経た破産債権につき、破産手続への参加資格(配当受領と議決権行使)が認められます(100条1項)。

 

定義だけをみるとよく分かりませんが、ここでポイントとなるのは、破産債権は、上記のとおり「破産手続開始前の原因に基づいて生じた」ことを要件とされていますので、破産手続開始後の原因に基づいて発生した債権はこれに含まれないということです。すなわち、法は、破産財団(破産者に属する財産のことです。)帰属財産の範囲を、破産手続開始時点におけるものに限定しており、これを「固定主義」といいます。なぜ固定主義を採用しているのか。それは、破産手続開始決定時を基準とすることで、引当財産としての債権者の期待の合理性と、破産手続開始の前後を区分することによる新旧債権者の公平な処遇を目してのことです。また、破産者に手続開始後の新得財産(後述します。)を保持させ、経済的再起更生の機会を与えることにもつながります。更に、換価対象が限定されるため、破産手続の迅速化にも資するという側面もあります。

 

破産債権とされるものには、様々なものがあります。既に延滞状態となっている通常の貸金債務は分かりやすいですが、それ以外にも、弁済期未到来・条件成就未確定のものや金銭債権以外のものも含まれます。これらにつき、破産手続による配当という目的実現のため、現在化・金銭化(これらを併せて「等質化」といいます。)がなされ、金銭という形に変換されます。すなわち、未到来の期限付債権は、破産手続開始の時に弁済期が到来したものとみなされ(現在化(103条3項))、金銭の支払いを目的としない債権は、破産手続開始時を基準に評価されます(金銭化(103条2項1号イ))。

 

また、破産債権の中にも種類があり、それらの間には優先順位が存在します。すなわち、破産手続は、破産者の総財産を換価・配当するということを最終目的として、僅少な財産を分配するものですから、厳格な順位付けが行われ、配当を現実に受けうる債権と、そうではない債権とを峻別します。具体的には、配当を受ける順位区分に従い、優先的破産債権、一般破産債権及び劣後的破産債権に分けられます。破産配当原資は、まず優先的破産債権に配当がなされ、残余があるときには一般破産債権に、そして更に残余があるときには劣後的破産債権、そして約定劣後的破産債権に配当されます(194条1項)。もっとも、自己破産を検討されている方にとっては、ここまで詳しい知識は不要な場合がほとんどであるといえるでしょう。なぜなら、同廃手続により免責を受けることを目的とする場合、そもそもの配当原資が存在しないからです。つまり、一般破産債権者にも配当がなされないわけです。

なお、それぞれの破産債権の一例を挙げておきますと、雇用関係に基づく労働債権は、債務者の総財産について先取特権を有するため、財団債権とされる部分を除き、優先的破産債権となります。また、租税債権は、一般の優先権ある債権ですので、破産手続開始前の原因に基づいて発生した租税債権のうち、破産法148条1項3号所定以外のものは、原則として優先的破産債権となります。

 

以上については、難解な法律の読み込みが必要ですので、皆様におかれましては、にわかに理解することはなかなか困難であろうかと思われます。ただ、押さえておいていただきたいのは、上述の「固定主義」に基づいて、法は、破産者に手続開始後の財産(これを新得財産といいます。)の保有を認め、破産者の生活の維持、経済的再起更生を認めているという点です。ですので、破産手続開始後に取得したお給料は債権者への返済に充てる必要はありません。あくまでも、破産手続開始前の原因に基づいて発生した債務につき、破産手続の中で処理がなされるという理解です。

 

より詳しい解説が必要な方は、神戸で昭和45年設立のシャローム綜合法律事務所までお問い合わせ下さい。